5  ランダム化比較試験

5.1 キーワード

ランダム化比較試験 (randomised controlled trial, RCT) は、「ランダム化」 (randomisation) という手法で介入群と対照群を設定する臨床試験です。

Note医師国家試験 第118回 B 09

ランダム化比較試験〈RCT〉で正しいのはどれか。

a 観察研究である。

b 外的妥当性が高い研究である。

c 未測定の交絡因子に対応できない。

d 有病率の低い疾患の研究に適している。

e 症例対照研究よりエビデンスレベルが高い。

RCT は、介入前をベースライン (baseline) と言います。また介入が終了した後に効果が持続するかどうかを見るために、3ヶ月や 1 年など追跡 (follow-up) 調査することもよくあります。調査時点を、介入前 (T0)、介入直後 (T1)、追跡 (T2) などと表現することもあります。

Note医師国家試験 第115回 B 06

ランダム化比較試験〈RCT〉について正しいのはどれか。

a 内的妥当性が高い。

b 二重盲検を要件とする。

c 第1相臨床試験で用いられる。

d メタ分析〈メタアナリシス〉の一種である。

e 観察研究に比べて交絡因子の影響が大きい。

RCT の特徴は、内的妥当性の高さなので、a が正解となります。

選択肢 e に、交絡因子 (confounding factor) という言葉があります。交絡因子は系統誤差の原因の一つですので、RCT ではむしろ影響が少なくなります。交絡因子は、統計学的には「調整」(adjustment) をする必要が出てきます。

confounding variable: variable that can cause or prevent the outcome of interest, is not an intermediate variable, and is associated with the factor under investivgation. Unless it is possible to adjust for confounding variables their effects cannot be distinguished from those of the factors being studied. … (Style Committee et al. 2020, 1028)

統計手法としては、繰り返しのある二元配置分散分析 (two-way repeated measures ANOVA) や混合モデル (mixed model) といった解析方法を使います。

RCT には、倫理的な課題があります。それは、参加者の多くは治療を期待しているのにも関わらず、治療をしない対照群に割り当てられる可能性がある点です。この観点から、サンプルサイズ (sample size) は小さい方が好ましくなります。一方で、効果推定のためにはサンプルサイズが大きい方が好ましいです。このため、予備試験 (pilot study) を実施し、サンプルサイズを推定することがあります。なお、サンプルサイズは症例数ということもあります。

5.2 ランダム化

ところが、ランダム化とは何か?と聞かれると、意外と答えられないものです。また、論文ではランダム化の方法まで報告されていることは少ないようです。ランダム化は、どのような目的で行うのでしょうか?

ランダム化の目的は、介入群と対照群を均質にすることにあります。例えば、年齢や性別が影響を及ぼす場合、100人をランダム化する場合は、両群の平均年齢と男女比がほぼ同じになるように分けます。このような、影響を及ぼす誤差を系統誤差 (systematic error) といいます。一方、「ほぼ」の部分は偶然誤差 (random error) になります。

おや、偶然誤差の「偶然」は、英語では random ですね。つまり、これがランダム化ということです。例えば、ランダム化して平均年齢が 70.4 才と 70.5 才になったとしたら、その差 0.1 は偶然誤差と言えます。

振り分けを「ランダムに」行うのではなく、「ランダムになるように」振り分けを意図的に行うことです。

ランダム化の目的は、医師国家試験に数回出題されたことがあります。

Note医師国家試験 第110回 B 22

ランダム化比較試験〈無作為化比較対照試験〉においてランダム割付を実施する目的はどれか。

a 治療中断の防止

b 偶然誤差の制御

c 治療内容の盲検化

d 比較群間の均質性の向上

e 患者の試験への参加率の上昇

ランダム化の目的は、正解は d となります。b については、「系統誤差を制御」が正しく、偶然誤差はランダム化でも残ります。1

1 選択肢 c にある「盲検化」とは何か?

介入 (intervention) と対照 (control) の比較を行います。動物実験の場合、対照を Sham ということもあります。

ランダム化の方法には、以下のようなものがあります。ここでは、20人の人を介入群と対照群に 1:1 で割り付けるとします。

5.2.1 単純ランダム化

参加者一人一人に、50%の確立でどちらかの群に割り付ける。

これは、一見すると正しいような気がします。ところが、実際に実行してみるとわかりますが、14:6 など、かなり偏りが出ます。

5.2.2 ブロックランダム化

ブロックランダム化は、単純ランダム化の問題を修正したものです。

あらかじめ、「介介対対」や「介対対介」などのように、コンピュータで 4 人分(ブロックサイズ)の割り付け方法を決めておきます。なお、4 人分だけでなく、2 人や 6 人などブロックサイズも変えることもあります。

こうすることで、おおむね 1:1 に割り付けられます。

5.2.3 層別ランダム化

ランダム化は、ランダム化した結果、両群が同じような集団にならなければあんりません。

しかし、ランダム化で偶然にも介入群に男性が10人、対照群に男性が0人となってしまうかもしれません。

これを防ぐために、あらかじめ性別でわけて、男性内でランダム化を行います。

層別ランダム化と並んで説明される方法に、最小化法というものがあります。しかしながら、あまり使われていないようなので、省略します。

5.2.4 クラスターランダム化

ここでいうクラスターとは、多施設試験におけるそれぞれの施設になります。

例えば、杏林大学病院と東大病院で共同する場合、杏林大学病院の患者をまるまる介入群とするというランダム化になります。

5.2.5 ランダム化の実際

4 大ジャーナル (および比較のためもう一つのジャーナル) を対象に、どのようなランダム化が使われているかを調査した論文があります (Bruce et al. 2022)。個人ランダム化が 348 (90%) であったのに対して、クラスターランダム化は 37 (10%) でした。単純ランダム化は 20、ブロックランダム化は 33件、層別ランダム化は 66件、ブロックと層別は 162件、最小化は 49 件でした。

Bruce, Cydney L, Edmund Juszczak, Reuben Ogollah, Christopher Partlett, and Alan Montgomery. 2022. “A Systematic Review of Randomisation Method Use in RCTs and Association of Trial Design Characteristics with Method Selection.” BMC Medical Research Methodology 22 (1): 314.

5.3 統計

5.3.1 ITT と Per Protocol

解析対象については、Intention-to-treat 解析や Per protcol 解析が行われることがあります。Intention-to-treat は、治療の意図という意味で、実際の治療ではなく当初の治療を指します。一方、Per protocol は実際に行われた治療を指します。この二つの単語については、日本語訳はされないことの方が多いようです。RCT では通常、per protocol よりも ITT の方が望ましいとされています。

AMA Manual of Style では、以下のように定義しています。

Intention-to-treat (ITT) analysis is the preferred way to report randomized trial results. Final results are based on analysis of data from all the participants who were originally randomly assigned, whether or not they completed the trial.

A per-protocol analysis reports a study’s results by the treatment received and not by the group into which the participants were randomly assigned.

(Style Committee et al. 2020, 988)

Style Committee, AMA Manual of et al. 2020. AMA Manual of Style: A Guide for Authors and Editors. Oxford University Press.
Note医師国家試験 第110回 B 13

治療 A と治療 B との比較を目的としたランダム化比較試験〈無作為化比較対照試験〉を行った。割り付けと実際の治療人数の表を示す。

治療 A を実際に行った 治療 B を実際に行った 治療開始前 に死亡した 合計
治療A割付 110人 15人 4人 129人
治療B割付 6人 115人 0人 121人
合計 116人 130人 4人 250人

intention to treat〈ITT〉で2つの治療を比較するときに、治療 A と治療 B の組み合わせで正しいのはどれか。

ITT ですので、「割付」を見れば良いことになります。割り付けられたのは、治療 A が 129 人、治療 B が 121 人です。これが正解になります。

ただし、RCT においては、実際には死亡した人の After のデータがない可能性があります。実際、この問題でも治療 A は 125 人という選択肢があり、そこで悩んだ人もいたと推察されます。

では、Per protocol 解析だとすると何人でしょうか?治療 A に割付られ、実際に治療 A を行った 110 人と、治療 B の 115 人となります。

ここまで見たように、RCT の強みは、実験に参加した患者 (または参加者) については妥当性が高いと言えます。これを内的妥当性 (internal validity) と言います。対象者以外に拡張する場合は外的妥当性 (external validity) や一般化可能性 (generalisability)と言います。

Note医師国家試験 第114回 E 17

ランダム化比較試験〈RCT〉について正しいのはどれか。

a 二重盲検は必須である。

b プラセボは現在では使用が禁止されている。

c ランダム割付は症例数を少なくするために行われる。

d 症例数の設定のためには治療効果の推定が必要である。

e Intention to treat〈ITT〉による解析は実際に行った治療に基づいて行われる。

正解は、d となります。

5.4 ガイドライン

RCT の論文のガイドラインは、CONSORT 声明です。

論文の例: Siramolpiwat S, Limthanetkul N, Pornthisarn B, Vilaichone RK, Chonprasertsuk S, Bhanthumkomol P, … & Issariyakulkarn N (2023) Branched-chain amino acids supplementation improves liver frailty index in frail compensated cirrhotic patients: a randomized controlled trial. BMC gastroenterology, 23(1), 154.

Teh R, Barnett D, Edlin R, Kerse N, Waters DL, Hale L, … & Pillai A (2022) Effectiveness of a complex intervention of group-based nutrition and physical activity to prevent frailty in pre-frail older adults (SUPER): A randomised controlled trial. The Lancet Healthy Longevity, 3(8), e519-e530.

Jiayuan Z, Xiang-Zi J, Li-Na M, Jin-Wei Y, & Xue Y (2022) Effects of mindfulness-based tai chi Chuan on physical performance and cognitive function among cognitive frailty older adults: a six-month follow-up of a randomized controlled trial. The Journal of Prevention of Alzheimer’s Disease, 9(1), 104-112.

Walters K, Frost R, Avgerinou C, et al. (2025) Clinical and cost-effectiveness of a home-based health promotion intervention for older people with mild frailty in England: a multicentre, parallel-group, randomised controlled trial. The Lancet Healthy Longevity, 6(2).

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